丸善丸の内本店で売上1位!と今新書部門で売れている齋藤ジンさんの「世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ」を読んだ感想を夏の課題図書第1弾として読みました。
斎藤ジンさんは1993年に日本の都市銀行を退職して渡米。以降、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で国際経済学と東アジア研究を学び、修士号を取得しました。
またヘッジファンド界の重鎮、ジョージ・ソロス氏に助言し、2012年に10億ドル(約1470億円)の利益をもたらしたとも言われる“伝説のコンサルタント”とされています。
今やトランプ大統領の次にニュースで顔を見ているであろうスコット・ベッセント米財務長官とも交流があり、アメリカにおける幅広いネットワークを持っています。
この方ヘッジファンドのマネージャーではありません。
なので自分で資産を運用することはなく、あくまでヘッジファンドにアドバイスしたりレポートを提出することを生業としていらっしゃいます。
新自由主義の終焉とゲームチェンジ
冷戦後の世界秩序を支えてきた「小さな政府」「市場至上主義」による新自由主義が、その信頼(コンフィデンス)を失い、崩壊しつつある状況が描かれます。
その結果として、「勝者と敗者がひっくり返る」ようなゲームチェンジが進行中だと著者は主張します。
新自由主義という既存システムの信頼が揺らいだ今、歴史的なパラダイムシフトが起きようとしています。
世界の反乱と日本へのチャンス
トランプ現象、ブレグジット、米中対立、ウクライナ戦争などはすべて「新自由主義への反乱」であるとし、こうした混乱の背景には共通の構造的問題があると指摘。
アメリカが中国を封じ込める中で、「強い日本」の役割が再び求められているという構図であり、これは戦後の冷戦構造と類似していると分析されています。
日本はアメリカにかつて目を付けられ、通商政策などにより経済を壊滅させられます。
それにより日本は「失われた30年」と呼ばれる長期デフレを招きつい最近まで停滞していました。
しかしここからがチャンスだと筆者は強調しています。
日本の構造的変化と「ルイスの転換点」
「失われた30年」と呼ばれる長期デフレの結果として停滞してきた日本ですが、一方で「ルイスの転換点」(労働供給の逼迫による賃金上昇の転換点)を迎えつつあることが強調されます。
労働力不足や賃金上昇に加え、サービス業の生産性向上余地の存在など、日本にとってのポジティブな構造変化が言及され、かつての“弱み”が“伸びしろ”になり得ると説かれています。

私が思ったよりもずっと急激なペースで賃上げは進んでいます。
インフレに対応するポジティブな構造変化が表れつつありますね。
中国の衰退、アメリカ・日本・EUの立ち位置
著書の中で印象的だったのは覇権国のことを「カジノの胴元」と表現していたことです。
その時代の覇権国は、自分たちの都合の良いように途中でルール変更することが可能で、かつて冷戦後にアメリカが日本にルール変更を強いたように、今は中国に対し関税等さまざまな措置で経済を潰そうとしています。
中国は高齢化(人口動態変化がアメリカに比べて悪い)や技術覇権争いの圧力に直面し、相対的に経済的・地政学的に苦境に立たされる可能性があると警告されています。
アメリカは引き続き「世界経済のカジノの胴元」として地位を保ちつつ、日本には新たな戦略的役割が期待されていると論じています。
著書には書かれていない議論、アメリカという国家の信認失墜の可能性は?

著書は第二次トランプ政権前に書かれたものです。
しかしトランプ大統領は就任後から、世界各国に対し喧嘩を売るように一方的に関税をかけると発表しました。
分断をあおる言動は相変わらずで、ついにはアメリカのハーバード大学やコロンビア大学等アカデミックな分野でも言論を締め付け、学生を学びの場から締め出そうとしています。

このようにせっかく戦後築き上げてきたアメリカ合衆国への世界の信認が、今確かに揺らいでいると感じます。
こんな調子でアメリカはこれからも「カジノの胴元」のポジションを維持し続けられるのでしょうか。
本書は今まさに読むべき一冊で、日本と世界の今後を考えるにはうってつけだと思います。
特に米国株式に多く投資している方は、今後のポートフォリオを考える上で参考になるかもしれません。
以上本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。



