「ジヴェルニーの食卓」という本を読みましたので、感想を書いていきたいと思います。拙文ではありますがお付き合い頂けたら幸いです。
ジヴェルニーの食卓は近代西洋美術の巨匠であるマティス、ドガ、セザンヌ、モネの4人の物語をそれぞれ4つの短編に分けた小説です。ひとつひとつの短編がそこまで長くないので、ボリュームとしてはとても読みやすいです。
私自身この巨匠4人の美術的知識や歴史背景を全くと言っていいほど知らないため、教養も兼ねて小説の力を借りてお勉強することにしました。
うつくしい墓(アンリ・マティス)
晩年のマティスの様子を侍女である女性の視点から描いた作品となっています。
マティスはパブロ・ピカソの終生のライバルと呼ばれています。マティスの方が10歳以上年上らしいですが、実際はお互いの存在をなくてはならないものと感じるほど熱い友情で結ばれていたそうです。マティスの作品を知らなかった浅学菲才な私でも、さすがにピカソは少しだけ知っていました(出会いは中学校の壁紙に飾れていたゲルニカ)。ピカソの絵は、NYメトロポリタン美術館で見たことがあります。盲人の食事という作品に惹きつけられました。
またマティスは「野獣派(フォーヴィズム)」の先駆けの一人として非常に有名であり、後の大きなムーブメントであるキュビズムにも大きな影響を与えていきます。
そんな彼ですが、明るいものしか絵には残したくないを信条にしていたらしく、豊かさ・楽しさ・光などポジティブな印象を受ける作品が多く遺っているようです。彼が生まれ育ったのは南フランスで、色彩豊かな画風やモチーフが植物や女性が多いのも、彼が美しいものと思ったものを描き続けた結果なのかもしれません。
作中ではマティスとピカソという巨匠の対比が、非常に分かりやすく表現されています。
ピカソが津波ならマティスは水平線。
マティスが羊雲ならピカソは入道雲。
けれど海に満ちる輝き、空に溢れる自由は、どちらの芸術家にも等しいものでした。
エトワール(エドガー・ドガ)
エドガー・ドガは変態なのか?彼について調べてみると、多くの人がこのことについて議論しているようでした。当時では珍しい生涯独身で、ゲイでもなく浮いた女性関係の話もない...なのに、なにやらバレリーナについてばかり描いて、そしてそれを眺める禿親父が作品の中にいるパターンが多い。
ここまで聞いても、どこか歪な精神部分を感じませんか?(苦笑)
今作では、ドガの長年の友人であったアメリカ人女性芸術家であるメアリー・カサットの視点からドガの仕事ぶりを描いています。
バレエダンサーは当時貧しい出身の少女がなる職業で、バレエを通し裕福な男性に品定めされ愛人になるのが彼女たちが貧困から抜け出す唯一の方法でした。
その様子を描いたドガの作品はどこまでも現実的で、美しくも悲哀に満ちたものとなっています。同じ画家でも、先ほどのマティスと随分違いますね。
原田マハの作品では最終的にはドガの人物像を読者に委ねたような形で終わっています。善人なのか独善的なのか...作品内の情報だけですと、私は齢15歳にもならない少女を自己実現のために利用しているように思えてしまいます。
タンギー爺さん
また後日書きます。
ジヴェルニーの食卓
日本人も大好きなクロード・モネの生涯を短編にまとめた作品です。今回の小説集のタイトルにもなっていますね。
義理娘のブランシェから見たモネの姿が描かれています。波乱万丈な人生ですが、モネは穏やかな人だったのが印象的でした。
一時かなりギリギリな生活を送っているのですが、それでも家族を愛し毎日セーヌ川に赴いて絵を描き続ける姿に、彼の確固たる信念や家族との強い絆を感じられ、4作品中一番のめり込むことが出来ました。
「光の画家」といわれるくらい太陽の下描き続けた彼は、紫外線の影響で晩年に白内障になるのですが、80歳を超えて手術をし、そこから睡蓮の大装飾画を完成させました。22枚のパネルで構成される8点で、つなげるとなんと91mにもなるそうです。
巨匠の御多分に漏れずモネも頑固なところが多々あり、友人であるフランス元首相クレマンソーとのやり取りがとても興味深かったです。
なるべく穏やかに日々を送りたい自分としては、この4人のなかではモネの生き方が一番心惹かれるかなぁと思います。
最近のちょっとした出来事
超とついても全く過言ではないくらい久しぶりにコンサドーレ札幌を観戦してきました。
人混みが苦手なので頼むから閑散としていてくれと願っていたのですが、私の願いなどガン無視でこの日は観客数21,000人超といつになく盛況な札幌ドームでした。相手が川崎フロンターレというのも大きかったです。
試合はなんと2ー0でコンサドーレが勝利。J2落ち争いをしているチームに全く見えない、それは見事なジャイアントキリングでした。
特に2点目の鈴木武蔵のヘディングは体幹の強さを感じさせる難しいゴールで、ゴールした瞬間の喜びを共有できる空間がスタジアムの醍醐味だなと再認識しました。これから冬場に入っていきますので、オフシーズンの野球やサッカーに代わりバスケットボールのレバンガ北海道にも挑戦しようと思います。
夏の終わりの良い週末でした!